1. 専門技術者資格制度について
自家用発電設備は建築物の防災・保安用電源や工場・事業者の常用電源等に使用され、使用時においてその機能を確実に発揮させることが不可欠で、それには製造面での品質、性能の確保はもちろんのこと、適切な据付工事、保全を行うことが要求されます。
そのために、各種事業場、工場及び様々な施設等に設置される定置形の自家発電設備に関し、その設計・製造、据付工事及び保全の各業務に精通した専門的な技術者を養成することが必要となり、自家用発電設備専門技術者資格制度を昭和52年に創設しました。
また、建設工事現場等で使用される移動用(可搬形)の発電設備を取り扱う専門的な技術者を養成することを目的とした可搬形発電設備専門技術者資格制度を昭和61年に創設しました。この2種類の資格制度により、自家用発電設備に関する高度で専門的な知識・技能を有する技術者を養成しています。
専門技術者を養成するために、毎年度資格取得希望者を募り、自家用発電設備の業務に係る講習及び試験を実施することで、試験合格者に専門技術者資格証を交付し、すでに3万名近くの技術者が専門技術者の資格を取得しています。また、資格取得後は5年毎に更新講習を受けて頂くことになっています。
試験結果の判定については、学識経験者等で構成する「自家用発電設備専門技術者審査委員会」において審査されます。
2. 専門技術者の資格の種類等について
専門技術者の資格の種類は、自家用発電設備専門技術者と可搬形発電設備専門技術者の2種類あり、業務区分についても装置、据付工事及び保全の3区分に分かれています。
種類 | 業務区分 | ||
---|---|---|---|
自家用発電設備専門技術者 | 装置部門 | 据付工事部門 | 保全部門 |
可搬形発電設備専門技術者 | - | 据付・保全部門 |
専門技術者資格保有者数(令和6年3月末現在)
種類 | 資格保有者数 |
---|---|
自家用発電設備専門技術者 | 21,727名 |
可搬形発電設備専門技術者 | 9,931名 |
計 | 31,658名 |
3. 専門技術者の活用について
(1)特種電気工事資格者の資格取得について
電気工事士法では、契約電力500kW未満のビル・事業場等に非常用発電設備を設置する場合、特種電気工事資格者(非常用予備発電装置工事資格者)でなければ工事の作業に従事できないこととされています。
自家用発電設備専門技術者の据付工事部門を取得し、所定要件を満たした者は、経済産業省産業保安監督部へ資格取得の申請手続きを行うことで、特種電気工事資格者の資格が取得できます。
(2)保安管理業務委託制度における「構造及び性能に精通する者」として
電気事業法では、2,000kW未満の内燃力又はガスタービン発電所の保安管理業務を外部へ委託する場合、委託された者に毎月1回以上点検を行うことが義務づけられていますが、「当該設備の構造及び性能に精通する者との契約により保守が実施されるものにあっては3ヶ月に1回以上」でもよいこととされています。
自家用発電設備専門技術者の保全部門を取得した者は、「当該設備の構造及び性能に精通する者」とみなされます。
(3)建設工事現場等における「電気主任技術者」として
電気事業法では、建設工事現場等で10kW以上の発電設備を使用する場合、発電設備を設置して使用する者は、発電設備の取扱い・安全確保を図るため電気主任技術者の選任が義務づけられています。
自家用発電設備専門技術者、可搬形発電設備専門技術者の資格は、電気主任技術者そして選任許可を受ける際に必要な実務経験を判断する材料の一つとされています。
(4)自家発電設備の点検及び整備を行う者
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消防法における「非常電源(自家発電設備)点検要領」では、「総合点検における運転性能の確認(負荷運転又は内部観察等)については、自家発電設備の点検及び整備において、『必要な知識及び技能を有する者』が実施することが適当であること。」とされています。
自家用発電設備専門技術者の保全部門を取得した者は、自家発電設備の点検及び整備において、この『必要な知識及び技能を有する者』として適当であるとみなされています。 -
火災予防条例(例)では、火気使用設備等の一つである発電設備の点検及び整備については、『必要な知識及び技能を有する者』に行わせることとされています。
この火災予防条例(例)により制定された各市町村の火災予防条例に基づく告示等において、自家用発電設備専門技術者は、発電設備の点検整備を行う『必要な知識及び技能を有する者』として運用されています。